内田です。

無益です。

ふりだしにもどる

数年前の出来事がずっと彼女を悩ませていた。望みははじめから無かったのだろうが、期待してしまったのだ。
彼女にはそれきり自信がなくなってしまった。目を輝かせて楽しそうに話すあの姿を思い返すだけで彼女の腹の中には鉛が流し込まれるようで、吐き出してしまいたいけれど、重く蓄積するだけだった。
確かに幸せなこともあったはずだ。涙が出るほど笑った記憶があるが、後になって心に充満するのは不安になった出来事ばかりであった。折に触れて思い出させ、いとも簡単に踏み荒らしていくその様を黙って眺めるしか無かった。彼女は一体何を思っているのだろう。
記憶の一番初めに刻まれてるのは間違いなく彼女であり、その溝は深く深く抉り込んでいる。それを屈託なく話しているのを聞いていると、彼女のこれまで少しずつ築き上げてきた自信はまた瓦解し、一瞬にして砂埃となってどこかに飛んでいってしまった。